今年の初め「中国武漢市で発生した原因不明の肺炎…」と伝えられた時は、まだ他人ごとのようでした。それがひと月もすると、日本中のあらゆる活動が自粛という事態に。そして「世界の新型コロナウイルスの累計感染者数が1000万人を超え、死者は50万人を超えた」と、つい先日のニュースは報じていました。アメリカやブラジルなど欧米諸国では、感染の勢いはおさまる気配がない状態。
こんな事態にもかかわらず、アメリカではどうして感染予防のためのマスクをしない人が多いのか、ということが昼のワイドショー番組で話題になっていました。そもそも大統領自らがマスクをしようとしません。当初は、世界保健機関 (WHO)でさえ、「健康な人はマスクをする必要はない」「マスクに感染症予防の効果はない」と言っていたぐらいです。
トランプ大統領支持者の多いアメリカ中西部は、特にマスクに対する抵抗感が強いらしく、その理由について昼のワイドショーは、「西部劇のような銃社会の価値観」を上げていました。
西部劇的なカルチャーでは、マスクというのは悪人の象徴であり、顔を見られたくないからマスクで隠すという印象になる。赤いバンダナで口を隠したスタイルは、まさに銀行強盗の定番。銃社会においては、自分がマスクをしていると「怪しい人間」と見られて「撃たれる」危険がある。反対に、他人がマスクをしていると「身の危険」を感じ、相手を撃ってしまう危険がある、と。
また、自主独立、開拓魂旺盛な「アメリカ人」は、自分の健康は自分で守る、「自分の身体」を守ることを強制されたくない、「マスクで守らなくてはならない」そんな軟弱な姿勢を見せたくない、というわけです。大変シンボライズされた絵解(えと)きですが、ややわかりやすすぎる説明のようにも思います。
いっぽう、日本ではもともとマスクに対する抵抗感はあまりなく、調べてみるとその歴史は150年前の明治時代にさかのぼるようです。今の厚生労働省の前身である内務省衛生局が出した啓発ポスターを国立健康医療科学院のサイト上で見ることができ、そこには、混みあう電車内で黒マスクをつけている乗客たちの様子が描かれ、厳しい警告が添えられています。